姿勢制御時における足底内在筋の活動

Kelly LA, Kuitunen S, Racinais S, Cresswell AG. Recruitment of the plantar intrinsic foot muscles with increasing postural demand. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2012 Jan;27(1):46-51.

PubMed PMID:21864955

  • 抄録No.1204-1
  • 執筆担当:
    県立広島大学
    保健福祉学部
    理学療法学科
  • 掲載:2012年4月1日

【抄録】

背景

立位姿勢制御時には下肢の筋活動に伴って身体の細かな変動がおこる。静止立位における主要な筋活動は足関節底屈筋群に起こり、前後方向の身体動揺に関連している。一方、足底内在筋の弱化がバランス障害の一要因として報告されていることから、姿勢制御において足底内在筋の資する役割は重要と考えられる。筋電図を用いた研究において、足底内在筋は歩行時Push-off相における足趾の安定化と距骨下関節の回内に抵抗する機能的単位として働くことが報告されている。また、立位姿勢制御時には内側縦アーチ高の維持や足部回内の制御などに作用することが報告されている。しかし、これらの研究では電極の配置、筋電波形の処理方法、詳細な実験手法の説明がなされておらず、また表面筋電計による評価では深部や下層にある個別の筋活動の把握は困難である。

目的

難易度の異なる2つの立位姿勢制御課題施行中における足底内在筋の活動パターンの違いについて、超音波画像により刺入した筋電(文中ではintramuscular EMG)を用いて評価することを目的とする。

方法

健常成人男性10名(平均年齢33歳、身長181cm、体重76kg)を被験者とした。実験条件はリラックスした非荷重座位(以下REL)、120秒間の両脚立位(Double Leg Stance-以下DLS)および60秒間の片脚立位(Single Leg Stance-以下SLS)とした。

筋電活動の計測では右足の母趾外転筋(abductor hallucis-以下AH)、短趾屈筋(flexor digitorum brevis-以下FDB)、足底方形筋(quadratus plantae-以下QP)を対象とした。正確なワイヤー電極の刺入を行うため、超音波イメージ下に電極の設置を行った。計測後には各条件における平均RMS値を抽出し、一元配置の分散分析を用い各条件間の比較を行った。

また、DLSおよびSLS条件においてバランスの測定を実施した。床反力計を用い、重心位置(Center of pressure-以下CoP)の前後成分と側方成分を抽出し各成分の移動速度を求めた。DLSとSLS間のCoP移動速度の比較にはt検定を用いた。

また、EMGとCoP間および各筋間における相互(波形)相関係数を求めた。

結果

DLSと比較しSLSではCoPの前後成分および側方成分が有意な増加を示した(ともにp<0.001)。またRELおよびDLSと比較しSLS条件における平均RMS値はAH(p<0.001)、FDB(p<0.001)、QP(p<0.02)ともに有意な増加を示した。また、RELとDLS間に有意差は認められなかったが、DLS条件においてAHの筋電活動の増加が10名中7名に認められた

またSLS時における筋電活動と側方成分においてAH(r=0.62)、FDB(r=0.40)、QP(r=0.40)と中等度~高度の相関を認め、CoPが内側に偏移した際に筋電活動の増加が認められた。なお、SLS時の前後成分と筋電活動およびDLS時における相関は認められなかった。

考察

先行研究では足部荷重量の増加に伴う足底内在筋活動の増加が報告されている。そのため、足底内在筋は内側縦アーチの二次的な支持機構として捉えられてきた。同様に内側縦アーチの変形はAHの活動の低下と関連することが報告されている。本研究結果よりSLS時における足底内在筋の筋電活動と重心動揺の側方成分の間には中等度から高度の相関が認められ、足底内在筋がバランスの保持に働くものと考えられた。特にSLS時において足部内側への動揺が起こった際に活動の増大が認められることから、足底内在筋の活動が姿勢制御の要求に応じて調整されるものと考えられた。加えて立位保持時には3つの足底内在筋の活動が高い相関を示した。先行研究により下腿後面の筋は重心の前方動揺がピークに至る前に活動することが確認されており、中枢性の姿勢制御システムの関与が示唆されている。本研究においてもSLS時の足底内在筋の筋電活動が正の相関を示し、またCoPの内側偏移がピークに至る前に活動が増加している。そのため、CoPの内側偏移時におけるAH、FDB、QPの同時的な活動は前出の中枢性のメカニズムが関与しているものと考える。

また、足底内在筋が距骨下関節の回内抵抗として働いた場合、踵骨の内側偏移(水平面)を伴う回外(前額面)と舟状骨高の低下抑制(矢状面)が観察される。足部の姿勢と機能は片脚立位バランスに影響を及ぼすことが先行研究により報告されており、その中で足底内在筋は足部安定化の補助として働きバランスを改善する。そのため、CoP内側偏移時のバランス維持のための一要因になるかもしれない。本研究結果は「足部内在筋の弱化が高齢者の転倒リスク増加とバランス能力の低下に関連する」という先行研究の結果を支持している。

【解説】

足底内在筋は筋自体のサイズが小さく部位の同定が困難である。そのため、筋電計を用いた評価では常にクロストークのリスクと隣合せである。これまでの先行研究では表面筋電を用いたAHの評価や経験則によるワイヤー電極の刺入を行っており、個別の筋の場所およびその機能や活動を正確に把握することが困難であった。本研究は実験の事前事後に画像を用いた電極の刺入および位置確認を実施しており、個別の筋の筋電活動を把握すると共にクロストークのリスクを最小限にするよう配慮した論文である。

足部の手術により内在筋に影響が及んだ場合、足部や足趾部の変形が起こる。また、足底内在筋自体の弱化や障害が足底腱膜炎、外反母趾、脛骨過労性骨膜炎などの一因になる事が過去に報告されている。そのため、ギプス固定後や加齢などにより内在筋の萎縮が想定される症例や、足部および足趾部の疼痛性障害や変形などが見られる場合では足底内在筋に対する評価および介入が必要になる。

足部はその構造上、距骨下関節の回内や内側縦アーチの下降を招きやすい。内側縦アーチは主に底側踵舟靭帯、 短足底靭帯、長足底靭帯、足底腱膜などにより支持されており、母指外転筋、短母指屈筋、短指屈筋、前脛骨筋、長母指屈筋、及び後脛骨筋などの筋性要素がその補助的な役割を担う。本研究により、①非荷重条件においてアーチの保持に足底内在筋が積極的に関与しないこと、②片脚立位かつ荷重の内側偏移に伴い足底内在筋の活動が増加すること、③足底内在筋の活動に中枢性メカニズムが関与することが示された。そのため、足底内在筋に対するリハビリテーションを想定する場合タオルギャザーなどの単純なトレーニングのみでなく、荷重下におけるさまざまな姿勢制御課題の設定など質的な変化を促す工夫が重要と考える。

【参考文献】

  1. Kura H, Luo ZP, Kitaoka HB, An KN:Quantitative analysis of the intrinsic muscles of the foot. Anat Rec 249:143-51, 1997.
  2. Headlee DL,Leonard JL,Hart JM,Ingersoll CD, Hertel J: Fatigue of the plantar intrinsic foot muscles increases navicular drop. J Electromyogr Kinesiol 18:420-5, 2008.
  3. Landry SC, Nigg BM, Tecante KE: Standing in an unstable shoe increases postural sway and muscle activity of selected smaller extrinsic foot muscles. Gait Posture 32:215-9, 2010.
  4. Menz HB, Morris ME, Lord SR: Foot and ankle characteristics associated with impaired balance and functional ability in older people. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 60:1546-52, 2005.
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