第3版
大切な人のために健康を「あきらめない。」
健康寿命をのばそう
公益社団法人 日本理学療法士協会
健康で長生きすることはすべての方々の願いではないでしょうか?
みなさまは健康寿命を延ばすために取り組みをされていますか?
この冊子は運動機能の改善や予防が得意な理学療法士が作成し、効果的な運動や必要な知識をわかりやすく説明しています。
是非みなさまの健康的な生活にお役立てください。
4ページ 健康寿命をのばそう!
12ページ 転倒を予防して健康寿命をのばそう!
16ページ 痛みを予防して健康寿命をのばそう
24ページ 認知症を予防して健康寿命をのばそう!
30ページ 脳卒中を予防して健康寿命をのばそう!
36ページ 尿漏れ対策をして健康寿命をのばそう!
39ページ むせを予防して健康寿命をのばそう!
42ページ あなたの生活と理学療法
こんな症状ありませんか?
ふらつくため、壁や家具につかまって歩いてしまう … | P12 |
痛みを理由に家族や友人の誘いを断ってしまう … | P16 |
もの忘れが多く、同じ会話を何回もしてしまう … | P24 |
トイレの回数が多い。くしゃみで漏れてしまった … | P36 |
お茶やみそ汁でむせてしまう … | P39 |
日々の身体の変化に目を向けて、生活をしてゆきましょう。
お役に立つ情報がたくさん載っていますので、是非ご活用ください。
フレイルは筋力低下などの身体の問題、認知症などの精神・心理的問題、社会的な問題を抱えている状態です。放っておくと要介護状態へ発展することがありますので予防が必要です。
フレイルチェックには簡易テストと総合チェックがあります。下記の簡易テストで問題があるときには医師や理学療法士に相談し、総合チェックを受けてみましょう。
指輪っかでふくらはぎを囲んだ時にどうなりますか?
当てはまる〇に枠と同じ色を塗ってください。
東京大学高齢社会総合研究機構
飯島勝矢「フレイル予防ハンドブック」から引用
各質問に対してあてはまるものを塗りつぶしてください。
みどり色の項目は、「はい」、「いいえ」が逆になっています。
お気をつけください。
赤信号が1つ増えるごとにフレイルの危険度が高まります。
健康寿命とは?
健康で日常生活を支障なく送ることのできる期間のこと
平均寿命と健康寿命の差、男性で8.84年、女性で12.35年
「死亡原因の上位を占める生活習慣病」
疾患別死亡原因
死亡原因の上位を占める「悪性新生物(がん)」、「心疾患」、「肺炎」、「脳血管障害(脳卒中)」など生活習慣が深く関与する疾患は、「生活習慣病」と呼ばれています。
★「生活習慣病」を予防するには、運動、食生活、喫煙、飲酒などの生活習慣の見直し・改善が重要です!
■「生活習慣病予防のための具体的な取組み」
・適切な運動習慣の獲得
・栄養バランスに配慮した食生活
・定期的な健康診断の受診
・禁煙
■「健康寿命をのばすことを阻害する要因」
・脳血管障害(脳卒中)
・認知症
・加齢による虚弱
・転倒による骨折
・運動器の障害(腰の痛み、変形性関節症など)
■適度な運動が効果的!
・血流改善により新陳代謝が促進
・中性脂肪量、血糖値や尿酸値などが改善
・心肺機能の強化、高血圧の改善
・健全な生活リズムの獲得とストレスの軽減
■運動を行う際の注意点
・個人によって適切な運動量は異なります。
・過度の運動は、他の部位に支障をきたします。⇒軽めの運動から始めましょう。
・関節の痛みや持病のある方は、間違った運動で痛みが増したり、疾患が悪化したりします。⇒主治医や理学療法士への相談が大切です。
・少しの運動でも継続することが大切です。⇒長く続けられる運動を取り入れましょう。
理学療法士にご相談ください!
一般に、老化は右下がりに進むと考えられてきましたが、亡くなる少し前まではからだの機能が比較的維持されていることがわかってきました。
(公財)健康・体力づくり事業財団ホームページ「健康ネット」より引用
http://www.health-net.or.jp/tyousa/tyokin/susume.html
運動によって、頭やからだの老化を抑えられるだけでなく、若返ることさえ可能になることがわかっています。
運動は何歳からでも、体力に自信の無い方ほど、正しい方法で取り組めば効果的です!!
地域の中での支えあいやサークル参加の例
・ミニコミュニティの集まり
ふれあい喫茶会・昼食会 自治会 婦人会 老人会など
・体を動かす取組み
体操会 ウォーキング ダンス・舞踊 卓球の会など
・文化的サークルへの参加
パソコン教室 料理教室 絵画教室など
生活習慣病予防に効果がある運動は、ウォーキングなどの有酸素運動と立って歩くために必要な筋力強化運動です。
運動を行う際の注意
・無理にのばしたり、反動をつけて行わない。
・痛みがでたり、痛みが増す時は、速やかに中止する。
有酸素運動
ウォーキング
・ご自身の体調に合わせて10〜30分、できれば1日に2回程度歩きましょう。途中で休憩を入れても結構です。
・少し息が早くなる程度、人と楽に会話ができる程度、やや汗ばみ、爽快感を味わえる程度の運動が最適です。
・この程度の強さの運動を有酸素運動といいます。有酸素運動は、体力や筋力を良くしてくれるだけでなく、血糖値を下げる、脂肪を減らす、血行を良くする、ストレス解消などの効果があり、生活習慣病予防にはとても効果的な運動です。
筋力強化運動
ひざのばし
椅子からの立ちあがり、歩行や階段の上り下りに必要な太ももの前の筋肉を強くします。
・片足ずつゆっくり足をあげ、ひざをのばします。
・そのまま5秒止め、おろします。
スクワット
足腰の筋肉を強くし、立位バランスを高め、階段の上り下りが楽になります。
・椅子の背もたれなどにつかまって両方のひざを一緒に、1・2・3・4と数えながら約30度まげます。
・そのまま5秒止め、ゆっくりのばします。
足のうしろあげ
正しい姿勢やバランスの保持に必要な背中からふともも後側の筋肉を強くします。
・椅子の背もたれなどにつかまって一方の足を1・2・3・4と数えながらうしろにゆっくりあげる。
・ひざ直角まであげたら、そのまま5秒止め、ゆっくりおろします。
足の外開き
歩行やバランスの保持に必要な腰からふともも外側の筋肉を強くします。
・椅子の背もたれなどにつかまって一方の足を横に1・2・3・4と数えながらゆっくり広げる
・約30度まであげたら、そのまま5秒止め、ゆっくりおろします。
「健康寿命」を短くする原因の一つに「転倒による骨折」があります。
転倒を予防するために、まずその原因を確認しましょう。
筋力低下
加齢による筋力(特に下肢筋力)の低下
バランス障害
加齢によるバランス能力の低下
視力障害
視力障害で段差などを認識しづらくなり、危険察知能力が低下
足首の関節がかたい
大きく踏み出すことができず、姿勢の立て直しが困難
環境
少しの段差、滑りやすい床、薄暗さも転倒の原因
薬剤
1日に薬剤を5錠以上飲んでいるなど薬の副作用等により、めまいやふらつきが出現
靴
重い靴はつまずきやすく、厚底の靴は足裏からの感覚が鈍くなり、転倒の危険性
1あなたの転倒リスク(危険性)をチェックしてみよう
・転倒リスクチェック一覧表の作成と自己認識
厚生労働省から出版されている「介護予防研修テキスト」などを参考にしてください
2“転ばない”身体をつくろう —転倒予防対策-
・身体のバランスを保つ
・足の筋力を保つ
・身体の柔軟性を保つ
3“転ばない”ための日常生活のポイント
・住まいを転倒しにくい環境に整備する
・メガネ、履物、杖など立って歩くための用具を適切に選ぶ
・適切な薬の服用に心掛ける
高齢者の転倒予防運動
高齢者の転倒は骨折に結びつきやすく、そのまま寝たきりにつながるおそれもあり、転倒予防のための運動をすることが大切です。
下肢の運動で「転ばない」身体をつくる
「転倒予防」のポイントは、「転ばない」身体を作ることです。そのためには、「身体のバランスを保つ」ことと「立つ、歩く際に必要な筋力を保っておく」ことが重要です。
下肢はたくさんの骨と関節で構成され、多くの筋肉が働いています。転倒予防に効果的な下肢の運動を継続的に行うことが大切です。
座布団の上で片足立ち
・かかとを10cm程度あげて10秒保持することからはじめましょう。
・テーブルを活用するなどよろけても大丈夫な方法で行いましょう。
前後左右へのステップ
・立った状態から左足を大きく前へ一歩踏み出し、戻す(右足も行う)。
・左足を大きく外側へ一歩踏み出し、戻す(右足も行う)。
・それぞれ5回ずつ行いましょう。
四つ這いバランス
・四つ這いで左手・右足を同時に挙げて5秒保持し、もとに戻す。
・反対も行いましょう。(右手・左足の挙上)。
・同時にできない人は、手だけ・足だけで行いましょう。
立った状態でのスクワット
・ゆっくりと両ひざを曲げ、ゆっくりとのばす。
(曲げる角度はできる範囲で、10〜20回から始めましょう)
・ひざに痛みがある場合は痛みのない範囲で行いましょう。
1 両手を頭の後ろで組む
2 息を吸いながらしゃがむ
3 息を吐きながら立ちあがる
立った状態で太ももあげ
・ゆっくりと片方の太ももをあげ、ゆっくりとおろす
(左右10〜20回から始めましょう)。
立った状態でかかとのあげおろし
・ゆっくりとかかとをあげ、ゆっくりとおろす
(10〜20回から始めましょう)。
・ひざが曲がらないように気を付けましょう。
国民の80%が、一生に一度は「腰の痛み」を経験します。
原因のはっきりしている「特異的腰痛」
・腰痛症のうち、レントゲン写真やMRI画像などで原因部位がはっきりしている腰痛を「特異的腰痛」といいます。
・具体的には、脊椎分離すべり症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症等があります。
・腰の痛みだけでなく、足の筋力低下やしびれ、尿が出にくいなどの障害を引き起こす可能性があります。
原因がはっきりしない「非特異的腰痛」
・腰痛のうち、ぎっくり腰のように原因がはっきりしない腰痛を「非特異的腰痛」といいます。
・過度の不安や安静は腰痛を長引かせ、再発の原因にもなると言われています。もしも腰痛になったら適切な検査・指導にもとづく運動を実施することをお勧めします。
腰の痛みを予防するために、日頃の生活習慣を見直すことから始めましょう。
1 姿勢に気をつける
・仕事などで長時間同じ姿勢を続けると背骨にかかる力のバランスが崩れてしまいます。
・無意識のうちに筋力低下や猫背などが進み、体の柔軟性が失われ腰の痛みの原因を招きます。
・良い姿勢を保つ意識を持ちましょう。
〈姿勢チェック〉
2 腰の負担をへらす
・「職場における腰痛予防対策指針(厚生労働省)」によれば、重量物の取り扱いは台車やリフターなどの機材を使用すること等が定められています。
・図のように、前かがみ姿勢での持ち上げ動作や体をひねる動作も腰の痛み発生の原因になりますので、腰に負担のかからない動作方法を知ることが大切です。
「腰痛体操〜筋バランスや筋力を向上させる〜」
・腰の痛みに対して骨盤ベルトや腰椎コルセットなどの着用が勧められていますが、装着時の安定感があるからと依存しすぎて常用するとかえってお腹周りや腰の筋肉を弱らせてしまう可能性があります。
・お腹周りや腰の筋肉を鍛える運動は腰痛改善に効果があります。
ウォーキング・ジョギング
動きやすい服・運動靴で会話ができる程度に息を弾ませて楽しみましょう。
ストレッチ
息を止めずに20〜30秒かけて気持ちよく感じる程度にのばしましょう。
腹部と背部の筋トレーニング
頭あげ、お尻あげ運動を10回程度から始め、徐々に増やしていきましょう。
・階段の上り下りがつらい、正座ができない、歩いていて、ひざが痛いと悩んでいる人は多くいます。
・ひざの痛みの多くは、ひざにかかる負荷によって筋肉・骨・軟骨・靭帯・関節包といった組織がいたむことで生じます。
・太ももの筋力が低下している人
・肥満傾向の人
・O脚 X脚の人
・高齢の女性
・スポーツ、身体運動でひざ関節を駆使した人
・半月板、靭帯の損傷、関節リウマチ、痛風等による関節炎の既往がある人など
ひざ関節は大腿骨、膝蓋骨、脛骨の3つの骨から構成される関節です。図をみてもわかるようにその形状だけでは不安定なので、ひざの内側、外側にそれぞれ側副靭帯、関節内の前後に十字靭帯があって前後左右または回旋方向への安定性が得られるような構造になっています。
1 | 膝を曲げたりのばしたりしていると、膝の中でゴリッゴリッ、コツコツ、ギュッギュッといった音がする | はい | いいえ |
2 | 階段をおりているときに、不意に膝の力がカクンと抜けてしまう | はい | いいえ |
3 | 和式トイレのあと、立ちあがるのが苦痛。正座も苦痛である | はい | いいえ |
チェック結果
1〜3の症状は、半月板という膝の軟骨が断裂したときによくある症状です。
4 | 膝が完全にのびきらず、平なところで足をのばしても膝の裏が床にぴったりつかない | はい | いいえ |
5 | 以前は「がにまた」ではなかったのに、「気をつけ」の姿勢をとると、両膝のあいだがこぶし1つ分離れる | はい | いいえ |
6 | 正座がまるっきりできない | はい | いいえ |
7 | 運動をし始めの時には膝が痛むが、続けていると痛みが取れていることが多い | はい | いいえ |
チェック結果
4〜7の症状は、変形性膝関節症と診断されることが多く、これは老化現象による症状です。
8 | 膝を曲げると、おさらの上が張った感じがして、少し膝が腫れている感じがする | はい | いいえ |
9 | 片手でふとももから膝に向けてしごいて、片方の手でおさら部分を押すと、おさらがコツコツ浮いた感じがする | はい | いいえ |
10 | 左右の膝のかたちが違う | はい | いいえ |
チェック結果
8〜10の症状は、膝の中に水がたまっている可能性があります。変形性膝関節症や関節リウマチの典型的な症状です。
11 | おさらが外側にずれているような感じがする | はい | いいえ |
12 | 膝がガクガクするので、いつも不安定 | はい | いいえ |
チェック結果
11〜12の症状の場合は、膝の靭帯が切れている可能性があります。膝蓋骨亜脱臼や膝不安定状態の時によく見られます。
もも裏ストレッチ
①イスに浅く腰掛けます。
②おへそを前に出すように身体を前に倒します。
③10秒間止めます。
※左右10回、1日3セットが目安です。
膝の筋力トレーニング
・運動を1セット10〜20回の回数で3〜4セット、行いましょう。
・運動中に痛みや疲労感を感じた場合はすぐに中止してください。
・運動のポイント:5秒かけてゆっくりと行い、5秒保持し、5秒で元にもどします。
ひざの押しさげ運動
太ももに力をいれて、ひざ下のまくらを押しつぶします。
スクワット運動
肩幅に足を開いて立った姿勢から、お尻をおろしていきます。
ひざのばし運動
ひざをまっすぐになるまでのばします。
ふとももあげ運動
ひざを胸に近づけるように持ちあげます。
ブリッジ運動
ひざを立てた姿勢からお尻を持ちあげます。
かかとあげ運動
壁につかまりながらかかとをあげてつま先で立ちます。
足の横あげ運動
横向きに寝た姿勢で足を真上に持ちあげます。
腹筋運動
ひざを立てた姿勢から両手でひざを触る。(おへそをのぞき込むように体を起こします)。
自分でできる認知症の気づきチェックリスト
最も当てはまるところに〇をつけてください。
まったくない | ときどきある | 頻繁にある | いつもそうだ | |
---|---|---|---|---|
①財布や鍵など、物を置いた場所がわからなくなることがありますか | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
②5分前に聞いた話を思い出せないことがありますか | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
③周りの人から「いつも同じ事を聞く」などのもの忘れがあると言われますか | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
④今日が何月何日かわからないときがありますか | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
⑤言おうとしている言葉が、すぐに出てこないことがありますか | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
問題なくできる | だいたいできる | あまりできない | できない | |
---|---|---|---|---|
⑥貯金の出し入れや、家賃や公共料金の支払いは一人でできますか | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
⑦一人で買い物に行けますか | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
⑧バスや電車、自家用車などを使って一人で外出できますか | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
⑨自分で掃除機やほうきを使って掃除ができますか | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
⑩電話番号を調べて、電話をかけることができますか | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
チェックしたら、①〜⑩の合計を計算 ⇒合計点「 」点
20 点以上の場合は、認知機能や社会生活に支障が出ている可能性があります。
お近くの医療機関や相談機関に相談してみましょう。
※このチェックリストの結果はあくまでもおおよその目安で、医学的診断に代わるものではありません。
認知症の診断には医療機関での受診が必要です。
※身体機能が低下している場合は点数が高くなる可能性があります。
出典:東京都福祉保健局高齢社会対策部在宅支援課「知って安心認知症」( 平成30 年12 月発行)
認知症は、記憶力や判断能力、時間・場所・人物などを理解識別する脳の機能が低下し、日常生活に支障がでる状態のことです。
「単なるもの忘れ」と「認知症」
▼単なる物忘れ
忘れたことを自覚している
地理や時間の感覚はある
あまり進行しない
日常生活に支障はない
▼認知症による物忘れ
忘れたことの自覚がないことが多い
地理や時間の感覚が失われることが多い
進行する
日常生活に支障がある
認知症の主な症状
・記憶障害 自分の生年月日、家族や知人の顔などを忘れる。
・記銘力障害 朝食を摂ったことや散歩にでたことなどが思い出せない。
・計算障害 簡単な計算(足し算・引き算)が難しくなる。
・見当識障害 朝昼晩の区別や、自宅の場所などがわからなくなる。
・精神的不穏 不安、うつ状態になる。睡眠障害や昼夜の逆転が出る。
・幻視や幻聴 実際に見えないものや聞こえないものが見えた、聞こえたと訴える。
・問題行動 外を歩き回る、過食・拒食、失禁、粗暴行為などが出現する。
生活習慣の改善
・生活習慣の改善が認知症の原因である脳梗塞や動脈硬化の予防に効果的です。
・運動習慣を身に付けましょう。
・栄養バランスのとれた食事、魚や野菜を多く摂り、塩分は控えめにしましょう。
・喫煙習慣がある場合は禁煙は特に重要です。
・規則正しい生活を送り、睡眠不足や過度の飲酒に気をつけましょう。
日常生活の活性化
・外に出て人と交流しましょう。
(服装・おしゃれに留意し、会話を楽しむ)
・趣味・余暇・スポーツ・ダンスなどを楽しみましょう。
・クイズやパズルなどのゲーム的なものにチャレンジしましょう。
・旅行の企画、パソコン、調理、絵画、書道、園芸などは脳の刺激に効果的といわれています。
初期症状の早期発見
あてはまる場合には早めに医療機関や専門の窓口に!
【認知症の初期症状】
・表情が乏しくなる。
・外に出たがらなくなる。
・身なりを気にしなくなる。
・同じ話を繰り返したり、ひとり言が多くなる。
・次にしようとすることが分からなくなる。
・いつも使うものの置き場所を忘れる。
・家族や知人の名前がすぐに出てこなくなる。
日々の生活に運動を取り入れて、認知症を予防しましょう。
ストレッチ運動
・準備運動としてストレッチ運動が大切です。身体のストレッチ運動にあわせて、呼吸リズムを整えることが大切です。
きっこう運動
・きっこう運動とは、体の左右で同時に別々の動きをすることです。
例えば、右手をグーの形に握って前に突き出し、同時に左手はひざの上でパーの形に開く運動です。
・左右異なる動きに意識を向けた運動を行うことで認知機能に関与する脳の領域(前頭前野)の活性を図ります。
・ゆっくりとした簡単な動きから始め、徐々に運動のスピードと難しさを増していきます。
有酸素運動
・軽度な運動を一定の時間継続することで、呼吸回数や呼吸の量が増し、積極的に酸素を血液の中に取り込み、血流の改善とともに脳や全身への酸素供給を増加させ、新陳代謝などを促進します。
ウォーキング(速歩)
・歩幅を少し広げて、少し速めに歩きます。
・歩く時には、ひじを大きく振りましょう。
・視線は5mくらい先におきましょう。
・少し息が早くなる程度のペースで約10〜30分歩きましょう。
(途中で休憩を入れても結構です。)
学習併行型運動
・国立長寿医療研究センターが開発した体を動かしながら脳を鍛える、認知症の予防に役立つ新しい運動です。
・基本的には下肢の運動やウォーキングなどの有酸素運動を行うのに加えて、脳を働かせる計算やしりとりなどを同時に行います。
・運動の目安は、1日30分、週に3日以上行うことが推奨されています。
足の横移動と引き算練習
・左右に交互に足を一歩ずつ横に移動させます。
・上記の運動をしながら、100から3ずつ引いていく引き算を行います。
・計算は7ずつの引き算や足し算などにかえてもいいでしょう。
・他の簡単な運動に変えても構いません。
ウォーキングとしりとり
・ウォーキングを行いながらしりとりを行います。
・ご夫婦やグループで行っても良いでしょう。
・花の名前、魚の名前、県名などお互いに課題をだしあいながら歩くことも良いでしょう。
もっとお知りになりたい方は
「理学療法ハンドブックシリーズ8『認知症』」をご覧ください
脳卒中は脳の血管の病気
・脳卒中は、脳内の血流が急激に途絶え、脳の神経細胞がダメージを受ける病気です。
・脳卒中には、脳の血管がつまる「脳梗塞(のうこうそく)」と脳の血管が破れて出血する「脳出血」や「くも膜下出血」があります。
・次の図で示すように「脳梗塞」は3つ、「脳出血」は2つに分類されます。
脳卒中はさまざまな後遺障がいを引き起こす
・脳卒中になると脳が受け持つ多種多様な心身機能の障がいが出現します。
・障がいの回復には、長期にわたるリハビリテーション医療や介護が必要になります。
まずは危険因子のチェックから
・脳卒中を予防するには、危険因子の存在を知ることが第一歩です。
・自己チェックや定期的な健康診断により、危険因子を避けましょう。
・危険因子を避けるには、生活習慣の見直しと適度な運動が重要です。
・脳卒中は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心臓病などの病気やかたよった食事、運動不足、ストレス、喫煙、過度の飲酒といった生活習慣の乱れと関係が深い病気です。これらを脳卒中の危険因子と呼びます。
・脳卒中の危険因子を十分に治療・管理することが予防につながります。
危険因子とは
治せる危険因子
高血圧 心臓病
糖尿病 脂質異常症
直せる生活習慣
喫煙
多量の飲酒
避けることができない危険因子
年齢
遺伝的素因
1 | 手始めに 高血圧から 治しましょう |
---|---|
2 | 糖尿病 放っておいたら 悔い残る |
3 | 不整脈 見つかり次第 すぐ受診 |
4 | 予防には タバコを止める 意志を持て |
5 | アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒 |
6 | 高すぎる コレステロールも 見逃すな |
7 | 食事の 塩分・脂肪 控えめに |
8 | 体力に 合った運動 続けよう |
9 | 万病の 引き金になる 太りすぎ |
10 | 脳卒中 起きたらすぐに 病院へ |
脳卒中は発症後2時間以内に治療を開始すれば良好な回復が期待できます。
脳卒中予防のための食事と栄養
塩分、糖質、コレステロールの摂り過ぎに注意を
・高血圧の状態が続けば血管の壁は厚みを増して、動脈硬化となり、血管はつまったり破れたりしやすくなります。
・脳卒中予防は、血圧のコントロールが最重要課題です。
手っ取り早い高血圧対策は
・塩分の摂取量を減らすこと。
・カロリー過多による「肥満」の解消。
食物繊維を積極的に摂る
・食物繊維は、悪玉コレステロールを排出してくれます。
・食物繊維が豊富に含まれる野菜や豆類、海藻類を上手に摂るようにしてください。
散歩、趣味活動など自分に見合った適度な運動で、定期的に身体を動かしましょう!
・定期的な身体運動は、運動不足の解消とともに、ストレスの軽減、睡眠不足の解消にもつながります。
・散歩や趣味活動などの運動時には、充分な水分補給を怠らないよう注意してください。
身体の変化・異常に注意、疑いがあれば一刻も早く医療機関へ
・脳卒中の治療は時間との戦いです。
・本ページに示すような症状があったら、ためらわずに119番、救急車を呼びましょう。
・大切なことは「いつ、どこで、どんな状況であったか」を医師などの関係者に的確に伝えることです。
・早期に発見し、早期に的確な治療ができれば回復の可能性が高くなります。
片方の手足や顔半分のマヒ・しびれが起こる
(手足のみ、顔のみの場合もある)。
ロレツが回らない、言葉が出ない、他人の言うことが理解できない。
片方の目が見えない、物が二つに見える、見ているものの半分が欠ける。
経験したことのない激しい頭痛がする。
力はあるのに、立てない、歩けない、フラフラする。
・脳卒中予防には有酸素運動が効果的です。日頃から運動をする習慣をつけましょう。
・筋肉のストレッチや筋肉の力をつけることも重要です。
運動を行う際の注意
・無理にのばしたり、反動をつけて行わない。
・痛みがでたり、痛みが増す時は、速やかに中止する。
・脳卒中になった後に行う運動は身近な理学療法士へご相談下さい。
腕のばし運動
手のひらを合わせて天井へ突き上げます。
ブリッジ運動
ひざを立てた姿勢からお尻を持ちあげます。
ひざのばし運動
ひざをまっすぐになるまでのばします。
ふとももあげ運動
ひざを胸に近づけるように持ちあげます。
かかとあげ運動
壁を支えながらかかとをあげてつま先で立ちます。
もっとお知りになりたい方は
「理学療法ハンドブック2『脳卒中』」をご覧ください
✓咳やくしゃみをした時にもれてしまう
✓体を動かしている時や運動をしている時にもれてしまう
✓重い荷物を持ち上げた時にもれてしまう
●これらは、おなかに力が入った時に尿がもれる、腹圧性尿失禁の症状です。
●腹圧性尿失禁は、妊娠・出産や加齢のほか、前立腺がんの手術などで、ぼうこうや尿道を支えている骨盤底筋がゆるむことによって起こります。
●尿もれは生活の質にも大きく影響します。トレーニングによって鍛えることができます。
●骨盤底筋は自分の意思で動かすことが出来ます。
●骨盤底筋のトレーニングでゆるんだ筋肉を鍛えて、尿もれを予防・改善させましょう
ポイント
・10回くり返します。1日3セットが目安です
・おなかやおしり、太ももの力はゆるめて、骨盤底筋だけを意識します
・おしっこやおならを我慢するような感覚でしめてみましょう
・息を止めないように気をつけましょう
基礎編
・あお向けに寝て、ひざを立て、おなかの力をゆるめます。
・尿道やこう門を5〜10秒しめて、ゆっくりゆるめます。
アクティブ編
・あお向けでできるようになったら、腰かけたり、立ったままで行ってみましょう。
・速く(1〜2秒)しめて、ゆるめることをくり返す運動も行いましょう。
「むせ」は気道に侵入した唾液や食物を排出するための防御機構です。
口の中が清潔でないと誤嚥した唾液や食物に菌が付いて入り込み誤嚥性肺炎になります。誤嚥性肺炎は、日本人の死亡原因の第7位です。
年齢を重ねるということ
口の健康が低下
・入れ歯になる ・滑舌が悪くなる
円背姿勢になる
・全身の筋肉が衰える ・飲み込みに働く筋肉が衰える
誤嚥性肺炎にならないために
・気道に異物が侵入しないようにきちんと蓋ができること
・異物が気道に入った場合は強く咳をしてきちんと排出できること
下記のチェック項目に見合った改善策を行いましょう。一番の予防は、元気に活動し、大きな声で会話し、笑うことです。
①口が乾く。口臭が気になる
→口の中に菌が繁殖している
↓
①唾液腺(耳下とえら内側)を刺激して口の中の乾燥を防ぎましょう。
入れ歯や舌の表面をブラシでやさしくこすって掃除しましょう。
②ろれつが回りにくい。食事に時間がかかり、食べにくいものが増えた
→舌の運動がよくない。入れ歯の適合が悪い
↓
②舌の運動をしましょう。「タ」「カ」「ラ」をはっきり素早く10秒連続して発声しましょう。
舌を「べえー」と大きく前に突き出し、左右に動かしましょう(5回)
③飲み込みにくい。一度に飲み込めない
→嚥下機能が低下している
↓
③飲み込みの筋肉を鍛えましょう。
準備:背筋を伸ばし、首を大きく回し、肩甲骨を体操してほぐします。
運動:あごをのどの方に強く引くのを自分で邪魔する抵抗運動をしましょう(5回)
④痰が絡みやすい。お茶や食事でむせる。食後にガラガラ声になる
→誤嚥のサイン
↓
④強くセキをする練習をしましょう。
準備:おもちゃの吹き戻しやピンポン玉を口をすぼめて強く吹く練習。
運動:たんをきるように「ゴホン」と強いセキをする練習をしましょう(5回)
食べる楽しみをずっと味わえる人生を送れるように予防しましょう!
あなたの身近に理学療法士がいます
理学療法士は、「赤ちゃん」から「お年寄り」までの人生のあらゆる場面でサポートします。
みなさまがより良い人生をお送りできるよう、理学療法士は活動しています。
[赤ちゃん]発達支援
[子ども]就学支援
[学生]スポーツ・健康づくり
[社会人]就労支援 生活習慣病予防
[お年寄り]介護予防・自立支援
全国47都道府県に理学療法士会があります!
地域ごとのお悩みはこちらへどうぞ。
本冊子に関するお問い合わせはこちらからお願いいたします。
参考・引用資料
P.6 ※厚生労働科学研究費補助金:健康日本21(第二次)の地域格差の評価と要因分析に関する研究(研究代表者 辻一郎)において算出。
○平均寿命:厚生労働省「平成28年簡易生命表」
○健康寿命:厚生労働省「平成28年簡易生命表」「平成28年人口動態統計」「平成28年国民生活基礎調査」総務省「平成28年推計人口」より算出
○疾患別死亡原因:平成25年人口動態調査
P.16 厚生労働省 平成25年国民生活基礎調査
注:有訴者には入院者は含まないが、分母となる世帯人員には入院者を含む
P.20〜21 東京女子医科大学東医療センター 整形外科・リウマチ科
(http://www.twmu.ac.jp/DNH/mce/seikeigeka/hiza/index3.html)
P.32 公益社団法人 日本脳卒中協会
(http://www.jsa-web.org/10/index.html)
P.34 公益社団法人 日本脳卒中協会
(http://www.jsa-web.org/stroke/index.html)
日本理学療法士協会HPよりダウンロード活用ください
引き続き、続刊をお楽しみに!
発行 公益社団法人 日本理学療法士協会
〒106-0032 東京都港区六本木7‐11‐10
TEL:03‐5843‐1747
FAX:03‐5843‐1748