一般財団法人 訪問リハビリテーション振興財団

訪問リハビリテーションでその地域を救いたい。
復興特区法施行から現在までを影で支える立役者

事務局長 松井 一人

司会
進行

一般財団法人訪問リハビリテーション振興財団は2015年10月で4年目を迎えました。これまでを振り返り、これからを見通すということで、これまでの各事業所のお話も受けて、まずは事務局長として事業に携わってきた松井理事から全体的な経緯などをお話しいただけますか。

松井

東日本大震災が発生した年の暮れ、日本理学療法士協会の半田会長と職員の吉田さんから電話をいただきました。復興特区で訪問リハビリステーションが設立できるという法律が施行された12月26日のことだったと思います。

そこで年明けから法律の確認と被災県の理学療法士会長を集めた会議の開催準備に取りかかり、2月にはその会議を実施しました。そこで各被災県の要望等を聞き、先ほど櫻田先生がおっしゃたように、最初は岩手県理学療法士会での事業化を検討することになりました。2月の終わりには現場をみようということで、山田町と宮古市に行き、初めて実際の被災状況を目の当たりにすることになりました。

壊滅的な町の状況に、事業所を開設するのであれば地域の力が必要になるということで検討しましたが、宮古市沿岸部の特異的な地理、地域性、資金などを検討すると、一つの士会の力では、なかなか難しいことが分かってきました。

そこで、先行して訪問看護ステーションの取り組みがあったので、訪問看護財団に生い立ちなどを教えていただきました。情報収集の結果、やはりここは協会として財団を設立したほうがよいだろうという結論に至り、その足で半田会長に相談をしにうかがいました。半田会長には一日もかけずに財団設立の決断をしていただきまして、その週にちょうど開催された理事会に議題として提出、承認を得て、総会でも理解が得られました。

設立に向けた動きが本格化するなかで、1番目の事業所として、自治体やJMATから要望をいただくことができた南相馬市が候補に上がりました。原発事故の問題もあり、職員募集をしても人が集まらないのではないかという不安があったのですが、福島の地で1泊2日の事業所説明会を開催したところ、南相馬市役所、保健師、私立病院の医師、ケアマネジャー、そして仮設住宅の所轄課の皆さんにお力添えいただいて、参加者の皆さんに現地の状況と訪問リハビリステーションへの期待を感じていただくことができました。

その後、南相馬市を皮切りに、宮古市、気仙沼市と事業所が立ち上がってきたのですが、全国から熱い思いを持ったセラピストが集まってきてくれて、事業所運営が軌道に乗っていることを心からよかったと思っています。被災地沿岸部は、日本の2025年以降30年に向けた日本の縮図と言われるなかで、訪問リハビリテーションでその地域を救うという思いをもってこれまで取り組んできました。日本理学療法士協会、日本作業療法士協会、言語聴覚士協会の3協会が力を合わせて事業に取り組み、担当理事の先生、スタッフの皆さん、関係者の皆さんの大変な努力のおかげですばらしい事業ができるようになってきたことは大変ありがたいと思っています。

当時の状況を語る松井事務局長
当時の状況を語る松井事務局長

リハビリテーション専門職の使命を自覚し、
将来の地域リハビリテーションのあり方を模索してほしい

理事長 半田 一登

司会
進行

最後に、半田理事長より今回のインタビューの総括を頂きたいと思います。これまでの皆さんのお話と、財団のこれまでの活動を振り返って、思うところなどをお話しいただけますでしょうか。

半田

東日本大震災が発生した後、私たちはそれぞれ被災地支援としてボランティア派遣を行いました。当初は3協会共同での支援活動を検討しましたが、当時の大混乱の中ではかえって困難ということで、それぞれの協会ができることをするという形になりました。私が会長を務める日本理学療法士協会では、募金活動と被災地へのボランティア派遣を行いました。また、私たちの活動とは別に、発災直後にリュックサックに食糧と寝袋を入れて現地に入ってくれた方もいます。このような活動の結果が今につながっていると認識して、それぞれの活動に携わってくださった皆さんに感謝しています。

事業所の管理責任者が研修会の講師などとして多くの地域から声がかけられています。東日本大震災発生からもうすぐ5年になりますが、災害支援に対する関心がますます高まっていることの表れだと思います。

日本理学療法士協会では東日本大震災の支援活動のために、ボランティア派遣から財団設立に至るまで、国からの資金援助は受けず、自前の予算を投資してきました。総額4千万円という金額は我々の予算規模からすると決して少ない金額とは言えません。ですが、私たちの職業の本位として身体に障がいがある方、身体的に問題がある方に対して、どのような状況下であっても、支援を提供していくことがあるという使命感のもと、会員からもご理解をいただいて、被災地支援のために使わせていただきました。

支援活動や財団の活動に関わっていただいた多くの皆さんの努力によって今日の成果があります。事業所のある3県の行政の方からも「良い仕事をしてくれています」と好意的な声を頂いていますし、実際の活動の場である地域の方々からも高く評価されているのだろうと思います。3つの事業所それぞれに、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が力を合わせて、私たちリハビリテーション専門職は地域を支えられるんだということを実証していただき、将来のリハビリテーション専門職の姿を作ってくれるだろうと期待しています。また、会員はもとより、国民の皆さまにも私たち財団の活動をご理解いただけるよう努めていきます。

支援活動への思いを語る半田理事長
支援活動への思いを語る半田理事長

財団および各事業所の活動については、一般財団法人訪問リハビリテーション振興財団ホームページをご覧ください。
URL:http://www.hvrpf.jp/
※財団では、現在職員を募集しています。詳細は財団HPをご確認ください。

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