「経済財政運営と改革の基本方針2025」に理学療法士に関連する記載が明記される

2025年6月25日
JPTA NEWS on-line

政府は2025年6月13日、「経済財政運営と改革の基本方針2025(いわゆる『骨太の方針』)」を閣議決定しました。本方針は、日本の持続可能な成長と財政健全化を両立させる中長期的な改革の基本方針として、毎年示されているものです。今年度の方針においても、理学療法士を含む医療・介護等の専門職に関連する重要な記載がなされました。以下に、理学療法士の活動に関連が深いと考えられる項目を紹介します。(※下線部、本会)

経済財政運営と改革の基本方針2025(いわゆる『骨太の方針』)(内閣府ホームページ)

【1】医療・介護・障害福祉分野の処遇改善(P9)
《該当項目:第2章 1-(2)(個別業種における賃上げに向けた取組)》

医療・介護・障害福祉の処遇改善について、過去の報酬改定等における取組の効果を把握・検証し、2025年末までに結論が得られるよう検討する。

▶ 本項目では、理学療法士を含む医療・介護従事者の処遇改善に関するこれまでの取り組みの効果検証が進められ、年内に一定の方向性が示される見込みです。理学療法士の待遇や職場環境の向上につながる政策的な動向が注目されます。

【2】現場職種の賃上げと経営安定への対応(P38)
《該当項目:第3章 2-(1)全世代型社会保障の構築》

医療・介護・障害福祉等の公定価格の分野の賃上げ、経営の安定、離職防止、人材確保がしっかり図られるよう、コストカット型からの転換を明確に図る必要がある。このため、これまでの歳出改革を通じた保険料負担の抑制努力も継続しつつ、次期報酬改定を始めとした必要な対応策において、2025年春季労使交渉における力強い賃上げの実現や昨今の物価上昇による影響等について、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう、的確な対応を行う。
このため、2024年度診療報酬改定による処遇改善・経営状況等の実態を把握・検証し、2025年末までに結論が得られるよう検討する。また、介護・障害福祉分野の職員の他職種と遜色のない処遇改善や業務負担軽減等の実現に取り組むとともに、これまでの処遇改善等の実態を把握・検証し、2025年末までに結論が得られるよう検討する。

▶ 今後の報酬改定を含めた制度設計において、理学療法士をはじめとする「幅広い職種」の処遇改善が政策課題として明示されています。安定的な医療・介護提供体制を維持するため、職種横断的な評価が期待されます。

【3】疾患に応じたリハビリテーションの推進(P41)
《該当項目:第3章 2-(1)全世代型社会保障の構築》

(がん、循環器病等の疾患に応じた対策等)
がん対策、循環器病対策、慢性腎臓病対策、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性疼痛等の疾患に応じた対策、難病対策、移植医療対策、アレルギー対策、依存症対策、難聴対策、栄養対策、受動喫煙対策、科学的根拠等に基づく予防接種の促進を始めとした肺炎等の感染症対策、更年期障害や骨粗しょう症など総合的な女性の健康支援を推進する。(中略)
また、自立支援・在宅復帰・社会復帰に向けたリハビリテーションの推進に取り組む。

▶ 疾病別の対策においてリハビリテーションが不可欠な役割を果たすことが強調されています。特に、がんや循環器病を含む慢性疾患に対するリハビリの重要性が、政策レベルで認識されている点は理学療法士の専門性が発揮される領域です。

【4】予防・健康づくり、重症化予防におけるリハビリの充実(P42)
《該当項目:第3章 2-(1)全世代型社会保障の構築》

(予防・健康づくり、重症化予防)
世界最高水準の健康寿命を誇る我が国の高齢者は、労働参加率や医療費でみても若返っており、こうした前向きな変化を踏まえ、更に健康寿命を延伸し、Well-beingの向上を図り、性別や年齢に関わらず生涯活躍できる社会を実現する。データヘルス計画に基づく保険者と事業主の連携した取組(コラボヘルス)や保険者の保健事業でのICTを活用したエビデンスに基づくPHRや健康経営と共働した効果的な取組を支援するほか、働き盛り世代の職域でのがん検診を広く普及するため、受診率や精度管理の向上の取組を更に推進する。AMEDのプライマリヘルスケア・プラットフォーム等を通じた支援により、エビデンスに基づくヘルスケアサービスを普及する。糖尿病性腎症の重症化予防等の大規模実証事業を踏まえたプログラムの活用を進める。高齢者の社会参加促進や要介護認定率の低下に向け、データを活用したエビデンスに基づく取組として、地域の多様な主体の連携協力や、成果指向型の取組等による効果的な介護予防やリハビリテーションを充実する

▶ 高齢者の健康寿命の延伸と医療費・介護費の抑制の観点から、リハビリテーションの果たす役割が明示されています。地域包括ケアやフレイル対策を含め、予防的介入における理学療法士の関与が今後さらに求められることが予測されます。

本会では、これらの政府方針の動向を注視しつつ、理学療法士の専門性が十分に評価され、処遇改善や活躍の場の拡大につながるよう、関係省庁への働きかけを継続してまいります。

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