大規模コホート研究による介護予防効果の検証と理学療法士による個別プログラムの有用性の検証

研究代表者:山田 実 先生(筑波大学人間系)

 
KEYWORD: 介護予防 通いの場 個別指導 転倒恐怖感 効果検証


1. 概要


 我が国は世界随一の長寿国であり、健康寿命の延伸が積年の課題となっている。増加の一途を辿る要介護認定者の抑制を目的に、2006年度より介護予防事業が開始された。これまでの調査・研究により、介護予防事業参加による身体機能向上効果や要介護抑制の短期的効果は認められているものの、その長期的効果は不明である。また近年では、理学療法士(以下、PT)や作業療法士等のリハビリテーション専門職が、介護予防の現場で活躍することが期待されているが、その専門性の活かせる係わり方は未だ模索途中である。本研究では、1. ハイリスクアプローチや通いの場への参加、自主的な運動等による介護予防効果の検証を行う、2. PTによる個別の運動プログラムの有用性を検証するという2つの目標を達成するために、次の3課題について取り組んだ。

課題1:H22年度より追跡しているコホート研究の分析
課題2:H30年度に新たに構築するコホート研究のための大規模郵送調査
課題3:PTによる運動フィードバックの有用性検討のための身体機能測定および運動介入。

*なお、本研究は滋賀県米原市と共同で実施しており、調査対象はいずれも米原市に在住する65歳以上の高齢者となっている(各調査開始時点)。

研究の結果、以下の点について明らかにすることができた。

通いの場への参加は、要介護の発生を抑制するとともに(図1)、介護給付費用の抑制に有用であった(図2)。
転倒恐怖感は各種身体機能の低下と関連しており、地域在住高齢者の約半数に認められた。この恐怖感は、その後の要介護発生を高める要因となっていた(図3)。
各種機能計測を行い、その後のフィードバックとともに運動実施の資料を配布したところ(図4-5)、高齢者の身体機能・認知機能の向上が認められた。このような効果は、PTがフィードバックに関与した場合も、していない場合も同等であった。
転倒恐怖感を有する高齢者に対しては、PTによるフィードバックが有用であった(図6)。

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    2. 今後の理学療法士の活用

    PTは転倒恐怖感を有する医学的サポートが必要な方(年齢が高く、疾病や疼痛を有し、運動機能が低い)に対して、リスク管理を行いながら効果的な運動指導が行える。

    転倒恐怖感はPTによる介入によって変化させられる可能性がある因子であり、今後の介護予防の中でも着目すべき指標の1つと考えられる。




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    この研究では次の2つを目的としました。1. 行政が運営する高齢者に対する介護予防教室や通いの場(食事会やお茶会、趣味活動、体操などを住民主体で運営)へ参加することが介護予防につながるかを検討すること。2. 高齢者に対して行った体力測定に対して、理学療法士が個別に結果説明と運動指導を行うことは効果があるかを検討することです。この研究は、滋賀県米原市にお住いの65歳以上の高齢者を対象として行われました。その結果、次の点が明らかとなりました。

    通いの場へ参加することは、要介護の発生を抑制し、介護給付費用の抑制に効果的でした。

    身体機能が低下することで転倒への不安が高まり、この不安感はその後の要介護の発生を高める要因となっていました。
    転倒への不安を抱えている高齢者は多く、実に地域在住高齢者の約半数が有していました。
    身体機能計測を行い、そのフィードバックとともに運動実施の資料を配布したところ、身体機能・認知機能の向上が確認できました。
    このような効果は、PTがフィードバックに関与した場合も、していない場合も同等でした。ですが、転倒恐怖感を有する高齢者に対しては、PTがフィードバックに関与することが効果的でした。

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