地域在住高齢者の虚弱化を予防し健康寿命を延伸する介護予防プログラムの開発と効果検証

研究代表者:中野 英樹 先生(京都橘大学)

KEYWORD: 地域 健康寿命 介護予防プログラム



1. 概要


 世界でも類を見ない超高齢化社会に突入した日本において、高齢者の健康寿命を延伸させ、介護給付費用を抑制するための介護予防策の構築は学術的・社会的な課題である。中でも、要介護(要支援)認定要因の1つであるフレイルは適切な介入・支援により再び健常な状態に戻るという可逆性があることから、フレイルの発生・進行を予防する効果的な介護予防プログラムが必要である。我が国では要介護認定率の地域差が存在することから、それを考慮した日本独自の介護予防プログラムの構築が求められている。

 そこで本研究では、滋賀県野洲市(農業地域)と京都市伏見区(都市的地域)に在住の高齢者を対象に、身体・精神心理機能の客観的・定量的評価を用いて高齢者がフレイルに陥る要因を明らかにするとことを目的とした。

調査の結果、以下の点が示された。

 2つの地域の健常群189名とプレフレイル群104名について解析を行った。群間比較の結果、年齢、運動器の機能、低栄養状態、口腔機能、認知機能、抑うつ気分、握力、膝進展筋力、30秒椅子立ち上がりテスト、5m歩行時間(通常・最大)、Timed Up & Goテスト、外周面積、片脚立位時間、GDS-5、主観的健康感、生きがい感に有意差を認めた。ロジスティック回帰分析の結果では、運動器の機能、低栄養状態、口腔機能、抑うつ気分、握力、5m歩行時間(通常)がプレフレイルの有無に影響を及ぼし、地域の要因は影響しない(表1・2)。

 また滋賀県野洲市の高齢者285名を対象とした調査では、主観的認知機能低下(以下、SCD)を有する対象者はSCD を持たない対象者に比べて、有意に高齢であり、ヘルスリテラシー(CCHL)や全般的認知機能(MMSE)が低く、抑うつ状態(GDS-5)が強かった。ロジスティック回帰分析の結果では、加齢、ヘルスリテラシーが低い、および抑うつ状態が強いことが地域在住高齢者におけるSCDの有無に影響を与える因子である(表3・4)。

 

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2. 理学療法士の活用

 プレフレイルの有無には運動器の機能、低栄養状態、口腔機能、抑うつ気分、握力、5m歩行時間(通常)が影響を及ぼし、地域(農業地域・都市的地域)の要因は影響しないことが示された。

 地域在住高齢者におけるSCD発症には加齢と抑うつ症状に加えてヘルスリテラシーの低下が関連することが示された。




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プレ・フレイルになる要因として、運動機能、低栄養状態、口腔機能、抑うつ気分、握力、5m歩行時間が影響することが明らかになりましたが、地域による差はない可能性があります。

高齢者の主観的認知機能に影響を与える原因として、加齢やヘルスリテラシーの低下、抑うつ状態が強いことが分かりました。

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