介護予防・日常生活支援総合事業を通じた予防理学療法の活用がその後の虚弱高齢者の身体機能向上、社会参加、介護サービス未利用状態の維持等に与える効果の評価

研究代表者:服部 真治 先生(一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構)


KEYWORD: 短期集中通所サービス(通所C) QOL 費用対効果 



1. 概要

 本邦における地域包括ケアシステム構築のため、「介護予防」の強化が進められている。平成27年4月には、介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)が創設され、予防理学療法等を活用して介護サービスの終了を目指す短期集中通所サービス(以下、通所C)の実践が増えつつある。
 そこで本研究では、通所Cのモデル事業参加者375名を介入後2年間追跡することで経時的な効果を検証した。


研究1

 曝露群(標準ケアに加えて短期集中予防サービス利用)と対照群(標準ケアのみ利用)で検証すると、観察した全29か月間の1月あたりの平均給付額は、曝露群が対照群を684.3円上回った。また、介入期間を含む29か月間の平均給付総額では、曝露群が対照群より約2万円高かった。しかし、介入終了後から24か月のフォローアップ期間の平均給付総額では、曝露群が対照群を下回った。そのため、観察期間を延長すれば、通所Cを追加的に提供した曝露群の平均給付額を対照群が上回る可能性がある(図1

 QOL効果値は、介入から29か月経過時点まで一貫して曝露群のQALYが対照群を上回り、観察した全29か月間における通所Cの有効性が支持された。また、要支援者の属性別にICERを分析すると、「女性」「65-74歳」「75-84歳」「過去に標準ケアの利用歴有」については、通所Cの方が費用対効果が優れていることが示唆された。


研究2

 介護サービスに加えて通所Cを利用することで、長期的に介護保険サービスの未利用状態を維持できているか、主観的幸福感やIADL、うつ、Timed up & Go testなどが優れているかを検討した。結果、通所Cは他の介護サービスのみを利用するよりも長く介護サービスの未利用状態を維持できた(約3倍)。また、介護費は対照群と比較し、曝露群は約18%低い値であった(表1・2)。曝露群は追加的に通所Cを利用するため、短期的には費用の増大をもたらすが、長期的には費用削減の効果があることが示唆された。ただし、主観的幸福感・健康観、ADL、うつ、QOLについて差はなかった。




hattori-t1-6.jpg

hattori-t1-7.jpg


hattori-t1-8.jpg



2. 理学療法士の活用

 本研究は、通所Cを利用することにより、将来的に介護サービス利用の減少や費用削減につながることを示した研究である。そのため、理学療法士の予防理学療法の積極的発展や、事業の新規参入・拡大に資する可能性がある。介護サービスの費用削減を狙う官公庁への働きかけとして、理学療法効果の一端を示すことのできるデータとして運用可能と考えられる。





message1.jpg

理学療法士が参画している短期集中通所サービスを利用することにより、一時的には個人の費用負担が大きくなりますが、サービス終了後、介護保険を利用しなくてもよい期間が増えることが分かりました。そのため、長期的には介護保険費用の抑制に効果が期待されます。

message2.jpg


トップへ戻る