認知症・認知症予防への運動の効果に関する研究について

認知症・認知症予防への運動の効果に関する研究について

世界アルツハイマー月間にちなんで公開している「9月21日はアルツハイマーデー!理学療法士と一緒に認知症について考えよう!」作成にあたり、参考とした資料・研究について紹介します。

  • 運動は認知症予防に有効である

日本神経学会『認知症疾患診療ガイドライン2017』CQ4A-7「運動は認知症予防に有効か」において、定期的な身体活動は認知症やアルツハイマー型認知症の発症率の低下と関連すると報告されていること、また、認知症のない高齢者や軽度認知障害を呈する高齢者に対する身体活動の介入試験では、認知機能低下を抑制したという報告があることから、運動を積極的に取り入れることが推奨されています。
出典:日本神経学会『認知症疾患診療ガイドライン2017』
https://neurology-jp.org/guidelinem/nintisyo_2017.html

  • 運動習慣が認知機能を向上させ、認知症のリスクを軽減する

3名の研究者の研究結果から、運動習慣の有無で、アルツハイマー型認知症の危険度が大きく変わることが示されています。全く運動しない場合と比べると、早歩き程度の強度の運動を週3回以上行っている場合は、アルツハイマー型認知症の危険度をおよそ半分減らすことができます。運動が認知症予防に効果的であることが分かります。

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出典:国立研究開発・国立長寿医療研究センター発行パンフレット「運動による認知症予防へ向けた取り組み」

  • 運動介入は日本人の軽度認知障害の高齢者にも効果がある

日本人の軽度認知障害の高齢者に、身体運動と認知課題を組み合わせた運動介入を行った結果、論理的記憶の改善、認知機能テスト得点の改善、運動機能の改善、脳の萎縮の進行抑制ができたことが示されています。
出典:Effects of Combined Physical and Cognitive Exercises on Cognition and Mobility in Patients With Mild Cognitive Impairment: A Randomized Clinical Trial
Hiroyuki Shimada ,Hyuma Makizako, Takehiko Doi Hyuntae Park, Kota Tsutsumimoto, Joe Verghese, Takao Suzuki
J Am Med Dir Assoc. 2018 Jul;19(7):584-591.

  • 認知症には転倒予防が必要

日本神経学会『認知症疾患診療ガイドライン2017』CQ3C-6「転倒・骨折の対応・予防はどのように行うか」において、認知症者は、非認知症者よりも転倒のリスクは約8倍、骨折のリスクは約3倍高いため、基礎疾患の治療、薬物の調整、運動、歩行とバランス訓練、補助具を装着しての訓練、環境整備、家庭環境への適応訓練を行い、多面的な介入で転倒予防に取り組み、骨粗鬆症治療を考慮する必要があることが述べられています。
出典:日本神経学会『認知症疾患診療ガイドライン2017』
https://neurology-jp.org/guidelinem/nintisyo_2017.html

  • 運動プログラム・認知トレーニングを含む複合的介入は認知機能低下を予防できる

フィンランドとスウェーデンの高齢者1,260名を対象に、介入群・対照群に分けて、理学療法士による運動プログラム、認知トレーニングを含む複合プログラムを実施した結果、2年後の認知機能テストで、認知機能の処理速度は150%アップ、実行機能は83%アップし、参加者のスコアは25%高いスコアとなったことが示されています。

出典:A 2 year multidomain intervention of diet, exercise, cognitive training, and vascular risk monitoring versus control to prevent cognitive decline in at-risk elderly people (FINGER): a randomised controlled trial
Tiia Ngandu, Jenni Lehtisalo, Alina Solomon, Esko Levälahti, Satu Ahtiluoto, Prof Riitta Antikainen, et al. Lancet. 2015 Jun;385(9984):2255-2263.

認知症への運動介入は医療介護費用を下げる

フィンランドにおける在宅認知症者に対して理学療法士が自宅を訪問もしくはデイケアセンターでグループでの運動に介入した研究では、理学療法士が介入していない口腔、栄養、運動の指導だけの場合(対照群)と比較して、医療・介護総費用において、日本円にして約130万円(※)以上のコスト削減が示唆されています。

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※2023年9月7日時点の為替レートに基づきます。
出典:Effects of the Finnish Alzheimer Disease Exercise Trial (FINALEX) A Randomized Controlled Trial
Kaisu H. Pitkälä, Minna M. Pöysti, Marja-Liisa Laakkonen, et al.
JAMA Intern Med. 2013 May;173(10):894-901.

認知症者への運動介入は転倒予防に効果的である

また、上記と同じ研究において、理学療法士が自宅に訪問、もしくはデイケアセンターで1回60分の運動指導を週2回1年間行った場合、看護師による口腔、栄養、運動の指導のみの場合と比較して、転倒による事故の確率が171→101もしくは83まで減ったという研究結果が出ており、理学療法士による介入が転倒予防に効果的であることが示唆されています。

出典:Effects of the Finnish Alzheimer Disease Exercise Trial (FINALEX) A Randomized Controlled Trial
Kaisu H. Pitkälä, Minna M. Pöysti, Marja-Liisa Laakkonen, et al.
JAMA Intern Med. 2013 May;173(10):894-901.

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