9月21日はアルツハイマーデー!理学療法士と一緒に認知症について考えよう!

9月21日は「アルツハイマーデー」、9月は「世界アルツハイマー月間」です。1994年、国際アルツハイマー病協会が、世界保健機関(WHO)と共同で、9月21日を「世界アルツハイマーデー」と制定しました。この日を中心に、アルツハイマー病等に関する認識を高め、世界の患者と家族に援助と希望をもたらす事を目的として、認知症の啓蒙が実施されています。また、9月は「世界アルツハイマー月間」として、様々な取り組みが行われています。

本会も「オレンジライトアップ」で認知症支援を呼びかけます

オレンジ色は認知症支援の色とされています。9月21日を中心に、全国各地のランドマークや庁舎等をオレンジ色にライトアップします。本会もオレンジライトアップに参加して認知症支援を呼びかけます。

1.認知症とは?

認知症とは、脳の働きが悪くなることで記憶や判断力が衰えて、日常生活や人との関わりに支障が出ることです。生活習慣と関わりがあり、定期的な運動やバランスの良い食事が予防につながることが分かっています。
※詳しくは、3.認知症を予防しよう!でご紹介する理学療法ハンドブックをご覧ください。

2.認知症の将来推計

2012年の患者数462万人を基に試算した認知症患者の人口は、各年齢層の認知症有病率が2012年以降も(認知症の有病率に影響する)糖尿病有病率の増加により上昇すると仮定した場合、2025年には730万人、2060年には、65歳以上人口のおよそ3人に1人にあたる1,154万人となると予測されています。

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出典:「清原裕 小原知之 米本孝二 二宮利治.厚生労働科学特別研究.厚生労働科学研究費補助金 厚生労働科学特別研究事業.日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究.二宮利治.2014年度総括研究報告書」(厚生労働科学研究成果データベース)(厚生労働科学研究成果データベース) (https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/23685)(2023年9月11日に利用)をもとに公益社団法人日本理学療法士協会が作成

3.認知症を予防しよう!

運動の認知症予防への効果

運動による認知症予防の効果について、以下のような研究結果が示されています。

    • 運動習慣を持っている高齢者は、認知症になるリスクが低い
    • 日本人高齢者の軽度認知障害への運動効果がある
    • 有酸素運動は軽度認知障害の海馬容積を増加させる

運動は、論理的記憶・認知機能・運動機能の改善、脳の萎縮の進行抑制、記憶力の向上を促し、認知症予防に効果があるとされています。

また、認知症者は非認知症者よりも転倒のリスクが約8倍になると言われています。認知症者の転倒予防も必要です。

理学療法士にできること

理学療法士は、以下のような介入等を通して、認知症予防のためにサポートを行うことができます。

    • 運動プログラム・認知トレーニングを含む複合的介入による、認知機能低下の予防・改善
    • 合併症などのある高齢者に対する運動時のリスク管理
    • 転倒予防
    • 運動介入により認知症・軽度認知障害(MCI)の予防・改善を通じた医療介護費用の低減

認知症・認知症予防への運動の効果や、認知症のために理学療法士ができることについて、さらに詳しく知りたい方は、こちら(認知症・認知症予防への運動の効果に関する研究について)

お役立ち情報のご紹介

  • 『理学療法ハンドブックシリーズ8認知症』

本会では、認知症について特集した冊子『理学療法ハンドブックシリーズ8認知症』を発行しています。認知症のセルフチェックや、認知症の種類、予防に効果的なトレーニングなどを掲載していますので、ぜひご覧ください。

『理学療法ハンドブックシリーズ8認知症』
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  • 毎日に笑顔をプラスするWEBメディア「リガクラボ」

本会が運営するWebメディア「リガクラボ」では、2記事にわたって認知症を特集しています。ご自宅で簡単にできる運動や、認知症の方への接し方のポイントなどをご紹介していますので、こちらもぜひご参考としてください。

【前編】認知症にならない生活へ セルフチェックで早期発見&予防しよう
【後編】認知症にならない生活へ 予防につながる、自宅で簡単にできる運動

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交流の場のご紹介

「認知症カフェ」は、認知症の人やその家族が、地域の人や専門家と相互に情報を共有しお互いを理解し合うことができる場所です。地域の状況に応じて、様々な団体・施設により実施されています。

認知症カフェは、全国7,737箇所(※)で運営されており、最寄りの地域包括支援センターに問い合わせたり、インターネットで検索するなどで探すことができます。

※2020年度時点

4.本会の取り組み

⑴高齢者への地域型保健指導モデル事業
「運動器の痛みに配慮した理学療法士を含む多職種協働の宿泊型保健指導」

本会が主体となり、医師・保健師・管理栄養士・理学療法士等が協働で認知症予防に関する指導を参加者に行う宿泊型保健指導を、長野県上田市の鹿教湯病院にて2015年に実施しました。

本プログラム参加者のうち、定期的な運動を実施している方の割合が本プログラムの参加前で27.8%だったのに対し、理学療法士が高齢者の痛みや疲労などに配慮した持続可能な運動プログラムの提供を行ったところ、参加6か月後には66.7%にまで増加し、定期的な運動習慣が得られることが示されました。

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「ものわすれドック」開催当時の案内チラシ

⑵理学療法士による日本式認知症予防の普及で国際貢献 シンガポールへの人材推薦

本会の国際事業として、シンガポールへ人材を推薦する活動を実施しました。2017年8月に初めて理学療法士を現地へ派遣するにあたり、本会にて人材を推薦し、日本式の認知症・介護予防がシンガポールで展開されました。現地では、コグニサイズと呼ばれる、身体運動と認知課題を組み合わせた認知症予防を目的とした運動介入の普及に取り組み、2019年3月には、他の医療グループに影響を及ぼす存在へと大きく成長しました。
シンガポールでは、現在も認知症・介護予防として二重課題運動プログラムが実施されています。

⑶理学療法士の質向上への取り組み 「軽度認知障害理学療法ガイドライン」を公表

本会会員を中心に1,400名を超える専門家のもと発行した科学的根拠に基づく『理学療法士ガイドライン第2版』の中で、一般社団法人日本予防理学療法学会による「軽度認知障害理学療法ガイドライン」を公表しました。臨床で働く理学療法士が、本ガイドラインを活用して質の高いサービスが提供できるよう努めています。

本ガイドラインは理学療法士のみならず広く国民が利用できるよう、日本理学療法学会連合のホームページで公開されています。
※ガイドラインは現在、一般社団法人日本理学療法学会連合が著作権を保有しています。

理学療法ガイドライン第2版はこちら
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⑷診療報酬改定における要望活動

本会では国民の医療・保健・福祉の増進に寄与することを目的として、国に対して要望活動を行っています。今回、令和6年度診療報酬改定に対する要望の一つとして、本会は「認知症ケア加算に関する施設基準の見直し」を厚生労働省に提出しました。

認知症者は非認知症者よりも転倒の危険性は約8倍、骨折の危険性は約3倍高く、認知症ケアにおいて転倒予防は重要な課題とされています。また、国際的な転倒予防ガイドラインにおいて、歩行能力やバランス機能を評価し、重症度に応じた対策を図ることが推奨されており、適切なアセスメントと環境調整の役割を担うために理学療法士が認知症ケアチームに加わることは、認知症患者の転倒予防に有益です。

以上の理由から、認知症を合併した高齢者の寝たきり予防や重症化予防のため、認知症ケア加算の認知症ケアチームが開催するカンファレンスの構成職種に理学療法士等リハビリテーション専門職を追加することを要望しています。

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