【歴史的転換点】「リハビリテーション統括調整室」が新設されるまでのあゆみ〜多くの悲願達成に向けた大きな一歩と、歩んできた変革への道程〜
記事作成日:2026年5月29日

2026年5月19日(火)、厚生労働省内に「リハビリテーション統括調整室」が正式に設置されました。これは本会が長年訴え続けてきた「多くの悲願達成に向けた大きな一歩」であり、日本の医療・介護・障害福祉・保健におけるリハビリテーション政策が新たなステージに進んだことを意味します。
1965年に「理学療法士及び作業療法士法」が制定され、日本に理学療法士が誕生して以来、その役割は時代背景とともに大きく変化してきました。医療、介護、障害福祉にとどまらず、健康増進・予防など、社会で活躍する理学療法士は多岐にわたっています。
省庁における現状と課題
厚生労働省内には、「看護課」や「歯科保健課」があり看護や歯科医療を取り巻く政策を推進する地盤を行政組織内に有しています。しかし、私たち理学療法士を含むリハビリテーション専門職は、これまで厚生労働省内横断的にリハビリテーションを統括する部署を有しておらず、免許や学校養成施設については医政局医事課、診療報酬は保険局医療課、介護報酬は老健局老人保健課などテーマや事業ごとに管轄する部局がバラバラに分断されていました。
このように窓口が分かれていたため、「リハビリテーション専門職の処遇を全体的に底上げしたい」「国として一貫したリハビリテーション政策を打ち出したい」と考えても、各局の縦割りの壁を乗り越えることは容易ではなく、リハビリテーション施策全体を統括してハンドリングする組織の設置が長年の願いでした。
厚生労働省組織図より抜粋して作成(看護課、歯科保健課)
リハビリテーション統括調整室の役割と期待されること
リハビリテーション統括活調整室が設置された5月19日(火)の閣議後記者会見において、上野賢一郎厚生労働大臣は、
1. 攻めの予防医療の具体化に取り組んでいく中で、リハビリテーション専門職が果たす役割は大きいこと
2. こうした観点も含め、理学療法士及び作業療法士法の施行から約60年が経過しているところ、制度的な見直しが考えられるか検討していく必要があること
の2点についてのご発言がありました。
今後、「攻めの予防医療」に関する政策が具体化に構築されていく中で、リハビリテーション専門職が果たす役割は期待されています。また、施行後約60年変わらない「理学療法士及び作業療法士法」の制度的な見直しの検討も想定されています。リハビリテーション統括活調整室の設置は、厚生労働省内の関係部局が一丸となって、医療、介護、障害福祉の垣根を越え、分野横断的にリハビリテーション政策を推進し、将来にわたり国民の健康の増進に寄与するリハビリテーションを国家戦略として推進していくものです。
・リハビリテーション統括調整室について(PDF:538KB)
そして、リハビリテーション統括調整室の設置から3日後の2026年5月22日(金)、高市早苗内閣総理大臣が議長を勤める、第7回経済財政諮問会議の資料において「攻めの予防医療」の6つの総合的な対策のひとつに「リハビリテーション」が追加されました。
第7回経済財政諮問会議資料4, p3より抜粋
日本理学療法士協会としてのこれまでの取り組み
省庁への要望活動の歴史は古く、省庁へのリハビリテーション、理学療法に関する部署の設置に関する要望は、遡れる限りおよそ50年以上になります。日本理学療法士協会がマイページ内に公開している十年史より、昭和48年(1973年)に、当時会長の矢郷弥太郎氏(第4代会長)より、当時厚生大臣の斎藤邦吉氏あてた陳情書があります。そこには「1.主務省庁医務局に理学療法専門官を設置して多様化する理学療法の業務量、人員配置、設備基準等の適正化を図り、無資格者の就業制限により医療および公衆衛生の向上に寄与する為。」とあり、省庁内へ理学療法専門官の設置について要望されています。
昭和48年の陳情書(十年史より)
リハビリテーションを考える議員連盟

リハビリテーションを考える議員連盟第1回総会の様子
また、近年では、2013年11月13日に、半田一登氏(第8代会長)のご尽力により、リハビリテーションを考える議員連盟設立総会が開催され、以後、国会議員に対し本会として様々な要望、意見交換を行ってきました。2016年11月29日に開催された第3回総会では「厚生労働省医政局にリハビリテーション課の新設」についての要望が提出されており、その後も第6回(2022年11月21日)以降、第13回(2026年4月22日)にわたって、「リハビリテーションを統括する部署の設置」に関する要望が提出されています。
自由民主党厚生労働部会・リハビリテーションに関する小委員会

第1回リハビリテーションに関する小委員会の様子
さらに、2022年2月10日に自由民主党厚生労働部会・リハビリテーションに関する小委員会(小川克巳委員長)の第1回が開催され、「我が国のリハビリテーションと専門職 現状と課題」というテーマの中で、「障害者・児およびリハビリテーション政策を担う省庁への専門家の配置」について言及されており、与党内の公式の場で議論されています。
また、本会事務局においては、2021年度の組織改編により政策企画課が新たに設置されました。1966年協会設立以来、処遇改善等、要望活動や政策提言活動を行ってきましたが、本会における政策・要望活動はさらに加速していきました。また、組織内議員と連携をしながら、毎年度各省庁へ予算概算要求要望を行う中で「リハビリテーションを統括する部署の設置」について厚生労働省へ直接要望を訴え続けてまいりました。

10省庁へ予算概算要求要望
・2026年度(令和8年度)予算概算要求に向けての要望書を10省庁へ提出(2025年7月15日)
悲願の達成に向けた大きな一歩「リハビリテーション統括調整室」設置へ
2026年度に入ってからリハビリテーション統括調整室が設置されるまでの主な出来事は以下の通りです。
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2026年4月22日(第13回リハ議連総会):
斉藤秀之会長らが登壇し、「攻めの予防医療の視点で、リハビリテーション専門職を国家戦略として積極的な政策投資をお願いしたい。そのためにも統括部署の設置を」と改めて強く要望。出席議員からも厚労省に対して「いつまで待たせるのか」と強い叱咤激励が飛びました。
・リハ議連第13回総会(2026年4月22日)
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2026年5月13日(衆議院厚生労働委員会):
リハビリテーションを考える議連幹事長の田野瀬太道議員が国会質問に立ち、上野厚生労働大臣へ直接迫ったところ、上野厚生労働大臣が「リハビリテーション統括調整室を設置し、体制を強化する」と明言。
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2026年5月19日(閣議):
「リハビリテーション統括調整室」が正式設置。閣議後記者会見で上野厚生労働大臣は、設置理由について、攻めの予防医療においてリハビリテーション専門職の果たす役割は大きいこと、施行から約60年経過した理学療法士及び作業療法士法の制度的な見直しの検討が必要であるとご発言。
・厚生労働省上野大臣会見(厚生労働省HP) ※再掲
今後の展望 ~国家戦略としてのリハビリテーションの新たなスタート~
リハビリテーション統括調整室の設置はゴールではなく、さらにその先にある多くの悲願達成に向けた大きな一歩です。施行から約60年変わっていない理学療法士及び作業療法士法の制度見直しの検討、攻めの予防医療の具体的な取り組みの構築を通じた、医療・介護・福祉の推進、健康増進・予防(一次予防、二次予防、三次予防)の推進、処遇改善など、国民に対する質の高いリハビリテーションの提供を実現するための新たなスタートです。5月20日、室が設置された翌日には室長 江浪 武志 氏(大臣官房審議官)、次長 中田 勝己 氏(医政局医事課長)が本会会館をご来館され、専門職団体と継続的な意見交換の場を設定し、必要に応じて積極的なやり取りをしたい、と力強く意気込みをお話しされました。また、本会から一方的に要望をするような依頼型の関係ではなく、共創型かつ透明な関係性を志向することをお伝えしました。
・厚生労働省に新設 リハビリテーション統括調整室 室長らご来館(2026年5月20日)
本来、理学療法士を含むリハビリテーション専門職が向き合う領域は、厚生労働省の管轄(医療・介護・福祉・障害)だけに収まるものではありません。母子保健や保育、学校教育や部活動におけるスポーツ傷害(文部科学省、スポーツ庁、こども家庭庁)、高齢者の移動手段やユニバーサルデザインの街づくり(国土交通省)、さらにはリハビリテーション関連機器の開発をはじめとしたヘルスケア産業の進展(経済産業省)など、その影響は全省庁に及びます。今回の厚労省内へのリハビリテーション統括調整室の設置は、真の「省庁横断型組織」を設置することを見据えた、極めて大局的なロードマップの第一歩なのかもしれません。
日々臨床業務にあたられている会員の皆様や教育現場で後進の育成をされている会員の皆様、リハビリテーションに関わる全ての皆様に改めて感謝申し上げます。
引き続き、本会は、厚生労働省をはじめ様々な関係省庁との連携、協力などの活動を通じて、国民の医療・保健・福祉の増進と理学療法の推進や充実、処遇改善など、業界の発展に向けて力強く働きかけてまいります。











